点ではなく、
線でつなぐ医療。

この仕事に就いて20年になります。青森県の看護学校を卒業後、最初に就職したのは道南の総合病院でした。ある高齢の患者さんの退院が決まったんですが、退院後の生活が心配になり、「何か自分にサポートはできないか」と先輩看護師に相談したところ、「それは家族や行政が考えることだから」と言われ、すごくショックでした。

10年前、結婚を機に寿都診療所で働くことになり、初めて家庭医療にふれました。ここでは患者さんの退院後の生活環境を考えるのは当たり前。たった一人の患者さんを医師、コメディカル、福祉、介護、行政、家族、近所の方も一緒になって、その方が在宅や診療所で療養できるような態勢をみんなで支え合って築いています。家庭医療は病気ではなく、人を診る医療です。肺炎を診るのではなく、肺炎を患っている○○さんを診る。だから症状が改善したら終わりではなく、退院後の暮らしもケアするのは当然のことなんです。自分が新人のときに思い描いていた看護観が間違っていなかったんだと、モヤモヤしていた思いがここに来てすっきり晴れました。

家庭医療看護とプライマリーナーシングを混同される方もいらっしゃるかもしれません。
プライマリーナーシングは一人の患者さんに対して一人の看護師が入院から退院まで責任を持ってケアをする看護方式です。その意味で病院や診療所の中で完結しています。一方 で家庭医療科の看護師は退院後も見据えて医師や家族、介護サービスの中継役となって繋ぎます。点ではなく、線の医療です。患者さんに歩み寄り、地域に歩み寄る。患者さんやご家族に近い所で濃密な関わりを持ちながら働く。家庭医療は医療の原点、看護の原点だと私は思います。

あなたの「これまで」が生きる。

家庭医療の素晴らしさを、後輩の看護師をはじめ多くの看護師にきちんと伝えたい。そのためにはもう一度しっかり家庭医療を学ぶ必要があると考えて、昨年、日本プライマリ・ケア連合学会が認定するプライマリ・ケア看護師の認定審査を受けました(※)。

審査の中では初めてポートフォリオを書きました。私自身が経験した事例を取り上げ、家庭医療のさまざまな観点から振り返り、学びに繋げるのですが、診療所の先生たちが診療内容はもちろん、表現の一つまで丁寧に添削し、サポートしてくださいました。ポートフォリオを書くことを通して家庭医療看護のあり方について省察でき、実際の診療にも大きなプラスになっています。

看護師のキャリアの中では、「看護師としてどこを目指したらいいのか」岐路に立たされる時がきっとあると思います。私がそうでした。もし少しでも地域医療に関心があるのなら、家庭医療に触れることを私は強くおすすめします。新しいフィールドに飛び込むには不安もあるでしょうが、むしろこれまでに培ってきた専門知識やスキルが家庭医療では必ず役に立ちます。周囲のスタッフにとっても勉強になるし、結果的に患者さんやご家族のためになります。家庭医療看護を経験することで看護師の原点に立ち返り、患者さんとの濃密な関わりを通して人間性を磨くことができるでしょう。家庭医療看護に興味を持った方は、ぜひ挑戦してみてください。

※日本プライマリ・ケア連合学会のプライマリ・ケア看護師認定は、北海道家庭医療学センターの看護師の中で目時みちよが第1号です。

プロフィール

目時 みちよ
看護師・助産師・主任
寿都町立寿都診療所

長万部町出身。中規模総合病院等を経て2012年より寿都診療所。
2020年プライマリ・ケア看護師認定。

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